Billboard (ビルボード)!

『ビルボード・チャート』、おそらく洋楽を聴く上で必ず目にするであろう言葉。
洋楽アーティストの国内盤ベストアルバムなどを購入すると、曲の解説が書いてあることがよくあると思います。
その中で「この曲はビルボード・□□チャートで第○○位」などとビルボード・チャートの成績も書いてある場合がよくあります。
しかも、順位は有名アーティストでも60位や90位や圏外なんかがふつうにあります。
ビルボード・チャートがアメリカの音楽チャートの名称であろうことは、誰でも推測できますが、よくわからないチャートだという人が多いはずです。

ビルボードで1位を獲得することは珍しいことなの?
そもそも、ビルボード・□□チャートって何?
ジャンルによって分かれている?
日本のオリコン・シングルチャートに相当するものって洋楽では何というチャート?

疑問だらけといわれる、アメリカで最も権威のある音楽チャート「ビルボード・チャート」を個人的な解釈で語ります。



ヒット曲とは何?(ビルボードを知るための導入)

ビルボード・チャートについて語る前に、まずヒット曲とは何かを考えましょう。
とりあえず、何を基準にヒット曲といいますか?

日本の場合は、やはり売上でしょうか?
日本では「売上が多い=ヒット曲」と考える人が多いのではないでしょうか。
もちろん売上が多ければ、単純に考えてその曲は人気であるといえます。

しかし、過去の日本の音楽を振り返ると、70年代80年代は大袈裟にいうとレコードが10万枚~20万枚売れると、日本全国の人達が知ってる名曲になっていました。
が、現在はどうですか?
大袈裟にいえば、100万枚売れた曲でも、その曲を買った100万人の人しかその曲を知らないという状況じゃないでしょうか!!

つまり、「売上が多い=ヒット曲」という考えは成立しません。

日本の場合は、音楽チャートというと、日本で最も権威のあるシングルチャートである『オリコン・CDシングル週間ランキング』に代表されるような、売上ランキングを思い浮かべる人がほとんどですよね?
テレ朝の「ミュージック・ステーション」もTBSの「CDTV」も、CDの売上ランキングを番組の中で発表しているくらい、日本では「音楽チャート=売上ランキング」という概念が定着しています。


でも、先程も述べたように売上だけでヒット曲といえるのか?


「ヒット曲とは何か?」←これを長年追求し続けているのが、世界で最も権威のある音楽チャート『Billboard (ビルボード)』です。

ヒット曲は売上だけでは決めることはできない、人が音楽を聴く手段は何なのか?
レコード?CD?ダウンロード?ラジオ?YouTube?インターネット?ストリーミング・サービス?などなど、その曲の社会への浸透度をヒット曲と考えランキングしているのが、『Billboard (ビルボード)』です!

これからビルボードについて知る上で、日本とアメリカの音楽ランキングは考え方が全く違うってことを、あらかじめ知っておきましょう。





ビルボードの歴史!

1894年「Billbord Advertising」創刊!
音楽とエンターテインメントの専門誌として創刊されました。

1897年「Billlbord」に改名!

その後、音楽業界の発展と共にその存在も大きくなっていきました。
長い年月を重ね、Hot 100など様々なチャートが誕生していくことになる。

現在では、世界で最も権威のある音楽チャートといわれている。



ビルボードとオリコン!

みなさんが知っているようにアメリカのビルボード・チャートはジャンル別にたくさんのチャートがあります(減ったり増えたりしてます)。

とりあえず押さえておくべきチャートは2つ。

アメリカで最も権威のあるシングルチャートの名称は、『Billboard Hot 100』であり、
アメリカで最も権威のあるアルバムチャートの名称は、『Billboard 200』です。

ビルボードにはジャンル別に様々なチャートがあるといいましたが、
全てのジャンルを含んだ総合シングルチャートが『Billboard Hot 100』であり、
全てのジャンルを含んだ総合アルバムチャートが『Billboard 200』です。

一般的に、全米シングルチャートといえば『Billboard Hot 100』のことで、全米アルバムチャートといえば『Billboard 200』のことです。

で、『Billboard Hot 100』は100位までランキングされ、100位に入らなければ圏外という扱いです。
『Billboard 200』は200位までランキングされます。

ちなみに、Billboardにはたくさんのチャートがあるといいましたが、『Bubbling Under Hot 100 Singles』というチャートを使えば『Billboard Hot 100』の101位以降のランキングを制作することも事実上可能です。

ここまで、まとめると、

アメリカで最も権威のあるシングルチャートは『Billboard Hot 100』
アメリカで最も権威のあるアルバムチャートは『Billboard 200』

日本で最も権威のあるシングルチャートは『オリコンCDシングル週間ランキング
日本で最も権威のあるアルバムチャートは『オリコンCDアルバム週間ランキング

ここで、アメリカと日本のチャートの名称を比較してわかるように、日本はシングルもアルバムもCDの売上が最も注目される国です。
というより、CDのみのランキングがメジャーな国は、現在世界中で日本くらいかもしれません。
チャートの名称に「CD」という言葉があるのも日本くらいではないでしょうか?

一方、アメリカのBillboard (ビルボード)は売上だけでは、ヒットかどうか計れない!
売上だけじゃなく、他の要因も合わせないとヒットチャートを制作できないっていう感じの考えで、ランキングを制作しています。

簡単に、そして大袈裟にいうと、オリコンっていうのはただ売上とか集計してランキングするということを昔から現在まで変わらずやり続けている会社であり、ビルボードはヒットチャートとはどういったものが好ましいのか、昔から現在まで常に試行錯誤し続けている音楽ブランドです。

ビルボードの集計方法は以下で。

『Billboard Hot 100』は、基本的に『Hot 100』と略することが一般的ですが、このサイトではなんとなく『Billboard Hot 100』と表記しています。

※このサイトでは『Billboard Hot 100』がシングルチャートであると説明してますが、厳密にいえばシングルチャートというよりも、楽曲チャートです。
昔はシングルカットされた曲しかランクインできていなかったのでシングルチャートといっても問題なかったと思いますが、現在はシングルカットしなくてもランクインできる仕組みになっているので楽曲チャートといった方が正しいかも。





Billboard Hot 100 の 集計方法!?

先程からいっているように『Billboard Hot 100』はオリコンのような売上ランキングではありません。
売上だけではヒット曲と判断できない、社会への浸透度で見極めるべきだというようなチャートです。

そんな『Billboard Hot 100』の現在の集計方法は、

ニールセンによるセールス(CD売上やダウンロードなど)とラジオ局のエアプレイ回数、さらにストリーミングなどをそれぞれポイント化し、そのポイントの合計値が最も高い順にランキングしています。

で、基本的に
Billboard Hot 100はエアプレイ重視です。(※エアプレイ重視と思ってますが、近年はダウンロードやストリーミングが強すぎて、エアプレイの影響力が弱まっていることは否定できません)。

オリコンと違い売上だけで順位が決まるわけではないので、売上が1位でも『Billboard Hot 100』では1位になれない現象は常に起こっています。

売上がたいしたことなくても、ラジオの大量エアプレイのみでBillboard Hot 100の上位にチャートインできた時代もあります。

ちなみに、Billboard Hot 100は時代に合わせて集計方法を変更するので、全米1位の価値は時代によって微妙に異なります(←個人的な意見です!)。

例えば、1955年の『Billboard Hot 100』開始当初は、小売店でのレコード・セールス、ラジオ局でのエアプレイとジュークボックスでの回数によってチャートを作っていました。

シングルCDの生産が始まった80年代になると、ラジオのエアプレイを75%、シングルの実売を25%の配分でランキングを作るようになりました。

1991年くらいから、エアプレイよりも
セールスのポイントを重視するように改正された時期もありました。
しかし、シングルCDっていうのは生産してもあまり利益が入らないため、売上の見込める人気アーティスト以外は、シングルCDをあまり作ってこなくなりました。
また、エアプレイで人気な曲がシングルカットされていない場合、つまり、シングルとしてリリースされていない場合は Billboard Hot 100 の対象外とされていたポリシーが問題視されるようになりました。

具体例をいえば、当時シングルカットされていなかったGoo Goo Dolls (グー・グー・ドールズ)の「Iris」という曲が、Hot 100 Airplay(エアプレイチャート) というランキングで通算18週1位(9週+9週)という空前の大ヒットを記録。
当時のBillboard Hot 100集計方法は、セールスとエアプレイで決定していたため、当然エアプレイで無敵の大ヒット曲「Iris」が Billboard Hot 100でも大ヒットするだろうと思いきや、シングルカットしていない、つまりシングルとしてリリースされてなかったため Billboard Hot 100 対象外となり、ランクインできませんでした。

「こんなのおかしいよぉ~」、と問題視され、

その結果、Billboard Hot 100 は、1998年12月5日付のチャートから、
シングルカットしていない曲でもランクインできるように改正し、かつエアプレイ重視に戻りました


そして、時が過ぎ、2005年くらいから、Billboard Hot 100はついに、
ダウンロードも集計に加えるようになりました。
日本ではいまだに一般化してませんが、現在のアメリカではデジタル・ダウンロードは当たり前の存在であり、子供から大人まで気軽にできるものです。
これにより、人気歌手は大量ダウンロード(デジタルセールス)により初登場でトップ10入りすることが珍しくなくなりました(Billboard Hot 100は初登場1位や初登場でチャート上位に来ることは以前はあまり見られませんでした)。

2012年には、新たに
インターネットでのストリーミング回数が『Billboard Hot 100』の集計方法に加えられました。
Spotify, Rhapsody, Rdio, Slacker, Muve Music, MOGという音楽のストリーミング・サービス会社6社のデータを取り扱うとのこと。
この時点ではYouTubeの動画は対象外で、『Billboard Hot 100』のストリーミング・データには加えられないと発表されました。

しかし、2013年3月からYouTubeのストリーミング回数も集計に加えるよう変更されました!
ちょこちょこ変更し過ぎだろってつっこみたいですね!

他には、Billboard Hot 100はランキングの価値を高めるためにホリデーソングは対象外としてきました。
ホリデーソングとは、いわゆるクリスマスソングなどのことです。
なぜ対象外だったのかというと、その季節になるとラジオで大量プレイされるため簡単にBillboard Hot 100にランクインしてしまうからです。
簡単にランクインしてしまうようなチャートでは価値がなくなるということで、Billboard Hot 100はホリデーソングを対象外としていました。

そんなわけで、世界的にヒットしたクリスマスソングである、ワムの「ラスト・クリスマス」やマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」は当時のBillboard Hot 100(全米シングルチャート)圏外という成績になっています。
しかし、
2000年頃にクリスマスソングに対する扱いが修正され、Billboard Hot 100にクリスマスソングもランクインできるようになってます(←なんでやねん!それ以前にクリスマスソング発売した人可哀想じゃん)。

こんな感じで、Billboard Hot 100は欠陥だらけのチャートといわれることもあります。
先ほども述べたように、時代に合わせて集計方法は修正や変更が行われています。
1975年は毎週のように全米No.1ソングが誕生していましたが、2005年に誕生した全米No.1ソングはたったの8曲だけだったりするのは、ランキングの集計方法が時代に合わせて大幅に変わっているからです。

ちなみに、現在のアメリカはシングルCD市場はないといっていいです(今というか、昔から無かったといってもいいですが)。
Billboard Hot 100で上位が見込めるような超メジャーな人気歌手がほんのちょっとシングルCD生産する程度。

90年代くらいまでは日本の「オリコンCDシングル週間ランキング」に洋楽シングルがランクインすることがたまにありましたが、現在では見かけることがなくなりましたよね?
この理由は、上記のように洋楽アーティストがシングルCDを生産することが極端に少なくなったことが理由です。






Billboard 200 の集計方法!?

全米アルバムチャートである『Billboard 200』の集計方法ですが、こちらはアルバムなので売上ランキングと思うかもしれませんが、2014年12月付けのチャートから劇的な変更が行われました。

2014年12月付のチャートから、Billboard 200 は、CDやレコードなどのフィジカル売上、ダウンロードなどのデジタル売上、オンデマンド型ストリーミング再生回数、さらに、アルバム収録曲単体のデジタル・セールスも反映されるようになりました。

つまり2014年12月付のチャートから、
オンデマンド型ストリーミング再生回数
アルバム収録曲単体のデジタル・セールス
の2つが加わったということです。


厳密には、Spotify、Beats Music、Rdio、Rhapsody、Google Playなどオンデマンド型音楽ストリーミングサービスでのストリーミング再生1,500曲分をアルバム1枚としてカウント。

そして、アルバム収録曲のデジタル・セールス10曲分が、アルバム1枚のセールスに"換算"される。


フィジカル売上とデジタル売上の合算は以前からずっと行われていましたが、ストリーミングをアルバムに反映させるというのは衝撃的な変更です。

そして、アルバム収録曲のデジタル・セールス10曲分がアルバム1枚に換算というのも衝撃。

これにより、今後、Billboard 200 はデジタル・セールスやストリーミングの影響力が大きくなり、CDなどのフィジカル・セールスの影響力はどんどん衰えていく可能性があります。

本当にこのようなものをチャートに反映させていいのか?と思ってしまいますが、時代に合わせて常に最新の音楽トレンドを追求するBillboard ならではの出来事でしょう。






Billboard Hot 100 の特徴!

『オリコンCDシングル週間ランキング』はCDの売上ランキングなので毎週のように初登場1位が誕生しています。
そして、ほとんどの作品は初週が最高位であとは落ちるだけ。
基本的に、「初週に何位にランクインできるか!」というのがオリコン・シングルチャート

『Billboard Hot 100』はというと、とりあえずチャートになんとかランクイン(ランクインすらできない場合もふつうにあります)。
基本的に、「そこから最終的にどこまで上昇できるのか」というのがBillboard Hot 100です。

そして、歴史上『Billboard Hot 100』に初登場1位はほぼありません。
長い歴史の中でBillboard Hot Hot100で初登場1位を記録した曲は約20曲程度で、基本的に初登場1位はないです。

↑↑の『集計方法』の項目で触れた、Billboard Hot 100がセールスのポイントを重視していた時期に、マイケル、マライア、ホイットニー、セリーヌなどの当時のビッグネームが次々に初登場1位を記録。
集計方法変更(エアプレイ重視に変更)された1998年を最後に初登場1位はでなくなりましたが、2003年から人気・知名度・話題性が抜群のアメリカン・アイドル優勝者が2006年まで4年連続で初登場1位を記録。
デジタル・ダウンロードの比率が高くなったと思われる2009年からは、人気歌手への大量ダウンロードでブリちゃん、エミネム、ケシャ、ガガ、ケイティが初登場1位を記録。
2013年にYoutubeが集計に加わった時に、バウアーの「Harlem Shake」が初登場1位を記録。
初登場1位はこれくらいです。

また、Billboard Hot 100は、16週連続1位や14週連続1位など長期間1位を独占する事態がたまにあります(こういう現象は1991年以降増えました)。

オリコンもチャゲアスが過去に13週連続1位記録していたりと、昔は10週以上1位を記録した曲が少しあったみたいですが、現在では基本的に、1週か2週程度しか1位を確保できない状態です。


全米アルバムチャートである『Billboard 200』の特徴としては、大ヒットアルバムは1年以上という超長期間トップ20あるいは、トップ10圏内にいる場合があります。
アルバム発売してから、シングルカットしていくアメリカでは、シングルカットした曲がヒットするとそれに比例してアルバムも売れます。
5曲くらいシングルカットする場合、1年前後かけてシングルカットしていくわけですが、そのシングルがどれもヒットすれば、それに比例してアルバムも売れ続けるわけです。
そして、もちろん、『Billboard 200』は売上が大きな要素となっているため、初登場1位もふつうに存在しています。



Billboard Hot 100 で苦戦を強いられるジャンル!

『Billboard Hot 100』の集計方法にラジオ局のエアプレイ回数がある。

これは極端な話だが、ジャズやヘビーメタルなどをラジオ局は大量プレイしたりしない。
また、カントリーソングもエアプレイしませんよ~、ロックバンドもあまりエアプレイしませんよ~って感じのラジオ局もある。

というわけで、エアプレイに強いジャンルはそれ以外のポップス、R&B、HipHopなどのジャンルということになる。

つまり、ポップス、R&B、HipHop以外のジャンルのアーティストは当然Billboard Hot 100で苦戦を強いられることになる。

世界的人気ロックバンドや人気カントリー・アーティストのBillboard Hot 100 (全米シングルチャート)の成績を調べてみるとわかることだけど、1位を獲得したことのあるアーティストはとても少ない。

Billboard Hot 100はそういうチャートなのだ。



安売りはカウントしない!(チャートの価値を守るために)

『Billboard』は2011年12月10日付のチャートから、3.49ドル(約268円)以下のアルバムと、0.39ドル以下(約30円)の楽曲(シングル)をカウントしないと発表しました。

チャートの価値を高めるために、安売りされたものはカウントされません。
これは発売から1か月(4週間)だけのタイトルにのみ適用されています。
1カ月過ぎれば安売りしてもカウントされます。

デジタル化によって値段の低下が進む近年ですが、安売り禁止になったきっかけは、レディー・ガガのアルバム『Born This Way』がAmazonで99セント(約76円)で売られたことです。
この値段は発売日限定でしたが、1日で40万枚以上という(アメリカの音楽界にとって)驚愕の売上を記録しました。
批判が多いこともあって、Billboardは値段の制限を設けて、チャートの価値を保つ決断をしました。

集計方法の項目でも触れましたが、以前はクリスマス・ソングを Hot 100 で対象外にしていたりと、とにかく、チャートの価値を守るためにどんどんポリシーを変更しているのがビルボード!!

頻繁かつ急なポリシー変更は迷惑な行為ですが、Billboard というチャートの価値を守るために必要なのです。

逆に、安売りCD、特典付きCD、ふつうのCDなど、制限を設けずにランキングしているオリコンは、チャートの価値が無くなったといわれることもあります。



全米1位の価値!オリコンとビルボードの価値!

日本の場合、『B'zが新曲をリリースしました』と聞けば、ほぼ全ての日本人が「来週のオリコン1位はB'zだろう」と予測し、実際にB'zの新曲が1位になります。

アメリカの場合、『マイケル・ジャクソンが新曲をリリースしました』と聞いても、「来週のBillboard Hot 100 はマイケルが1位だろう」とはなりません。

集計方法、チャートの特徴でわかったように、オリコンとビルボードのシングルチャートでは1位の価値観が全く違います。


具体例を挙げると、日本のオリコンでは、ジャニーズのKinKi Kids(キンキキッズ)がデビューから32曲連続1位というギネス記録を保持し、現在も更新中です。
10曲以上連続で1位を記録した歌手がたくさんいるのが日本です。
日本の音楽界しか知らない人は、こういう記録を知っても特に驚かないと思いますが、アメリカの記録はどうなっているでしょう?

デビューからの連続1位記録は、
アメリカのBillboard Hot 100 では、マライア・キャリーの5曲連続1位が歴代最高記録となっています。

集計方法の違いもあるので、単純に比較できませんが、とにかく日本は1位が簡単に獲得できる音楽チャートになってます(※チャートの性質が全く違うので本当は比較すべきではありません)。

要するに、アメリカは2曲連続や3曲連続で1位を獲得するだけでも快挙なのですが、日本は連続1位が当たり前です。
デビューからに限定しなければ、B'zは46曲連続1位という仰天の記録を作り、現在も更新中です。
ちなみに、アメリカのBillboard Hot 100 における、デビューからに限定しない連続1位記録は、ホイットニー・ヒューストンの7曲連続1位が歴代記録。

とにかく、日本の場合は曲はあまり関係なく、人気や知名度があれば1位確実のアーティストが多いように思います。
日本では連続1位をみんな当たり前に思っていますが、世界的に見れば、異常なのです。

日本では人気アーティストのシングルはたいてい1位で、トップ5に入らなければ失敗くらいな勢いです。
しかし、アメリカは大物アーティストでも、シングルチャート圏外は常に起こっています。

こういうわけで、日本で1位とアメリカで1位では、その価値は全く違います。





ビルボードに存在する様々なチャート!

ここまで「Billboard Hot 100」や「Billboard 200」といった総合チャートに関して、いろいろ好き勝手に書かせてもらいました。


たまに日本の歌手が全米デビューします。
そんな感じで世界中の歌手が集結しているのがアメリカの音楽界であり、アメリカの音楽市場はかなり層が厚い。
さらに、「Billboard Hot 100」はチャートの特性上1位を獲得するのはかなりハードルが高い。
歴代の1位獲得アーティストを見ると、限られたスーパースターのためのチャートともいえるかもしれません。

それが理由というわけではありませんが、最初に書かせてもらった通り、Billlboard はジャンル別のチャートが数え切れないほどたくさんあります。

ポップ・ミュージック』のための「Pop Songs」、「Adult Contemporary」、「Adult Pop Songs」。

カントリー・ミュージック』のための「Hot Country Songs」、「Country Airplay」、「Country Digital Songs」、「Country Streaming Songs」、「Top Country Albums」など。

ロック・ミュージック』のための「Hot Rock Songs」、「Rock Airplay」、「Alternative Songs」、「Alternative Albums」、「Adult Alternative Songs」、「Mainstream Rock Songs」、「Folk Albums」など。

R&B/Hip-Hopミュージック』のための「Hot R&B/Hip-Hop Songs」、「R&B/Hip-Hop Airplay」、「Hot R&B Songs」、「Hot Rap Songs」、「Top R&B/Hip-Hop Albums」、「R&B Albums」、「Rap Albums」、「Adult R&B Songs」など。

他にも『Dance/Electronicミュージック』ための、『ラテン・ミュージック』のための、『Christian/Gospelミュージック』のためのチャートがそれぞれたくさんあります。

もちろん、『ジャズ』、『クラシック』、『ブルース』など、他にも多数あります。

チャート別に集計方法も違います。

シングルに関し、基本的にはやはり「Billboard Hot 100」で語るのが一般的だとは思いますが、上の方で述べた「Billboard Hot 100」で苦戦を強いられるジャンルの歌手や、「Billboard Hot 100」にランクインできないような歌手は、ジャンル別のチャートで語るしかないですし、ジャンル別のチャートを軽視してしまう人もいるかと思いますが、そのジャンル別のチャートで1位を獲得することも当然価値のあることです(層が薄いどうでもいいようなチャートもあるにはありますけど・・・)。


2013年に人気カントリー歌手のキャリー・アンダーウッドがこんな発言をしています。

「私は今年、全米カントリーチャート(Hot Country Songs)で3週以上1位を獲得した唯一の女性歌手よ、3週ね!」

こういう発言を聞いてわかるように、やはりカントリー歌手の場合、総合チャートの「Billboard Hot 100」で苦戦を強いられるため、「Hot Country Songs」ようなカントリー・チャートで自分のステータス誇示します。
カントリー歌手というか、カントリー・ソングが「Billboard Hot 100」で1位なんて歴史上片手で数えるくらいしかないこともあり、カントリー歌手にとっては、カントリー・チャートで多くの1位を獲得することの方が価値がある事といえるかもしれません。

ちなみに、カントリー歌手もたまに「Billboard Hot 100」で上位を獲得する場合がありますが、そうなると、「もうあの歌手はカントリーじゃない、ただのポップ歌手」というように、皮肉をいわれてしまうこともあります。


ところで、Billboard は時代に合わせて新たなチャートを創設したり、従来のチャートのポリシー変更、チャート名称変更などを常に行っています。

EDMといわれるジャンルの音楽がチャートを席巻するのが当たり前になった2013年に、「Dance/Electronic Songs」というチャートを創設しましたし、

2014年には「ARTIST 100」という、セールス、エアプレイ、ストリーミング、SNSでの話題性などで決まる総合アーティスト・ランキングを創設したりと、新たなチャートは続々誕生しています。

Twitterと連携したリアル・タイムチャート「Billboard Twitter Real-Time」や、ストリーミング・サービスの成長により誕生した「Streaming Songs」や「On-Demand Songs」も新しいチャートです。


そういえば、楽曲のデジタル売上の「Digital Songs」というチャートがありますが、ある意味このチャートが「オリコンCDシングル週間ランキング」に最も近いといえるBillboard のチャートかも・・・。



これは偶然?ビルボード・チャートの疑問!

・John Lennon(ジョン・レノン)のシングル「#9 Dream」 第9位
・Prince(プリンス)のシングル「7」 第7位
・James Blunt(ジェームス・ブラント)のシングル「1973」 第73位
・Boyz Ⅱ Men(ボーイズ・Ⅱ・メン)のアルバム「Twenty」 第20位

上記のように、ビルボードがユーモアで意図的に順位を決めているのではないか?
というような事がたまにあります。
もちろん偶然だろうけど・・・・。



時代に対応するBillboard

人が音楽を聴く手段、音楽との関わり方は、時代が進むにつれ、常に変化しています。
そして、Billboard は常に変化に対応し、チャートポリシーの変更を行っています。

これは、当たり前のことです。

ダウンロードが当たり前の時代になれば、ダウンロードをチャートに反映させるのは当たり前。

新作アルバムが異常な安売りされる事態が発生すれば、チャートに反映させないようにし、チャートの価値を保つのは当たり前。

楽曲がリリースされると同時に公式音源がYouTubeにアップロードされ、ミュージック・ビデオが解禁されると同時にYouTubeに公式ミュージック・ビデオが解禁される洋楽の世界では、YouTubeをチャートに反映させることは当たり前。

人が音楽を聴く手段は常に変化しているので、チャートポリシーの変更は当たり前。

別にアメリカに限ったことではありません。

2004年以降、多くの国がデジタル・シングルを音楽チャートに反映させ始めましたし、

2012年にアメリカがストリーミングの反映を開始して以降、他の国でも、ほんの少しずつストリーミングを音楽チャートに反映させるケースが増えています。

シングルチャートを廃止し、エアプレイチャートを一般化させた国もあります。

もちろん、ストリーミング・サービスが普及している国もあればしてない国もある。

国によって、音楽チャートの算出方法が違うことも当たり前。




結論!

ビルボードの集計方法など完璧に理解するのは難しい。
時代に合わせるため、常に集計方法を試行錯誤している状態で、問題点もあります。
いきなりランキングのポリシー変更したりすることも日常茶飯事です。

それと、ビルボードは糞っていう評論家の人もいますし、ビルボードビルボードビルボードとビルボードをリスペクトし過ぎない方がいいかもしれません。


しかし、世界で最も権威のあるチャートであり、このチャートで1位を獲得することはアーティストとして、これ以上ない最高の名誉であることは間違いないです。

とりあえず、
全米シングルチャートは『Billboard Hot 100』、全米アルバムチャートは『Billboard 200』なのだと覚えておくだけでOKです。

そして、


・日本ではオリコンチャートの影響で「CD売上=ヒット曲」という概念ができています。


・アメリカのBillboard Hot 100は売上ではなく「社会への浸透度=ヒット曲」という考えでポイント制のランキングになっています。

という基本的なことを理解しとけばいいよ。多分ね。



ビルボードJAPAN Hot 100!!!!

アメリカ・ビルボードの社員AとBとその上司Cの会話(この会話はフィクションです)

A「おいおい、日本じゃいまだにシングルCD売上ランキング発表してるオリコンチャートっていうのが、一番メジャーみたいだぞ!」

B「冗談だろ?先進国で(当時)GDP世界2位の日本がそんな事あるわけ・・・・・、本当だああ、シングルCD売上ランキングが一番人気って・・、言葉が出ねえよ」

A「Billboard Hot 100みたいな総合シングルチャートが日本には無いみたいだな」

B「ああ、しかもシングルCDがふつうに流通してるのって凄いな。さすがジャパニーズ」

A「これって、総合シングルチャートを日本につくってやれば儲けることができるんじゃないか?」

B「そうだな、ちょっと上司に相談してくる」




C「日本に進出だ!さあ、行って来い!」

A、B「了解!」



という会話があったかどうかわかりませんが、近年、ビルボードが日本に進出して、「ビルボードJAPAN Hot 100」という総合楽曲チャート(ランキング)を創設してます。

セールス、エアプレイ、Gracenoteのルックアップデータ、Twitter上でのアーティスト名や曲名のツイート回数をポイント化した日本国内唯一の総合楽曲チャート(ランキング)になっているので、洋楽の楽曲も邦楽に混じってランクインしています。
興味のある方はどうぞ。